犬の肘関節形成不全

Canine Elbow Dysplasia・CED

【CED の背景】

犬の肘関節形成不全 (CED) は大型から超大型犬種で発症率が高く、発症した場合に動物の生活の質 (Quality of Life [QOL]) を著しく低下させる整形外科疾患の一つとして認識されています。

肘関節は、上腕骨そして前腕骨を構成する橈骨と尺骨の計3本の骨により成り立っている複雑な関節ですが、CED はこの3本の内、1または2本の骨の異常により発生すると考えられています。比較的多く認められるものとしては、尺骨の上腕骨に対する関節面の異常(尺骨の肘突起または鈎状突起の異常)です。また上腕骨の内側関節面における軟骨の異常も認められることがあります。さらに確定診断が比較的難しい関節面の不整合性という病態も CED の一要因として考えられています。

一般的に、CED の発症原因については不明ですが、遺伝的素因の関連性が強く疑われており、肘関節を構成する3本の骨の成長不均衡も病態の進行に関連していると考えられています。

【CED 罹患動物に多く認められる症状】

来院する動物の症状に関しては、前肢の跛行または歩様異常が大半を占めます。
下記症状に気付かれて来院される方が多いです。

  • 片側の前肢に体重をかけていない。
  • 歩行中頭が上下する。
  • 寝ている状態から起立して歩く際に歩き方がおかしい。
  • 運動または散歩を嫌がる。
  • 散歩の帰り道に座り込む。
  • 前肢が細くなってきた。
  • 肘関節が腫れているように見える。
  • 起立しているよりも座ることを好む。

【CED の診断方法】

  1. 飼い主い主さんからの情報をもとに、歩様検査により跛行の有無および部位を推測します。
  2. 歩様検査の所見を考慮し、起立位および横臥位での整形外科学的検査を行います。その際、筋肉量、腫脹の有無、疼痛の有無、そして関節の動く範囲などを細かく評価します。もしCED に罹患している場合には、筋肉量の低下、肘関節の触診時に痛みを訴える、関節が十分に動かすことができない、などが認められることがあります。
  3. ここまでの検査所見をふまえて、CED が疑われた場合は、次に放射線学的検査を行います。放射線学的検査では、肘関節の前後方向および側方向からのX線写真を撮影します。公の検査機関による評価を希望される場合には、アメリカの検査機関である に撮影したX線写真を郵送することも可能です。
  4. 歩様検査、整形外科学的検査により CED が強く疑われるにもかかわらず、放射線学的検査により明らかな病変が認められない場合には、関節鏡検査を推奨します。関節鏡検査に関しては、CED の治療の項に記載しますが、CED の有無を検査することが可能というだけではなく、もし病変が認められた場合にはその処置を行うことができます。

    また関節鏡検査の前に確定診断を希望される場合には、にて Computed tomography (CT) による肘関節の構造の検査も推奨しております。

肘関節に重度のCEDがあるL.レトリバーの右肘X-ray写真
(左;正面像 右;外側観)

肘関節に重度のCEDがあるL.レトリバーの右肘X-ray写真
(上;正面像 下;外側観)

【CED の治療法】

CED の治療法には、【内科的治療法】【外科的治療法】がありますが、これらの治療法を行う際には、常に体重制限および運動制限に加えて、動物の生活環境の整備が含まれます。

CED を発症した場合、発症する前の状態に回復することは非常に困難であることを認識する必要があります。CED の治療を考慮する際には、CED によって発症する二次的な病態の進行を予防することが主要な目的となります。この目的を考慮すると、体重制限および運動制限は罹患肘関節に対する負担を軽減するために実行する必要があります。

【内科的治療法】に関しては、治療という表現を使用していますが、CED の根本的な治療ではなく、動物の痛みを軽減する目的として、非ステロイド性抗炎症薬および軟骨保護薬を使用します。

【外科的治療法】には、関節鏡下での処置と肘関節を外科的に切開して直視下での処置の二種類があります。CED の場合、関節鏡下での処置では、肘関節の内側に2個所(約 2~5 mm)の切開を加えて、それぞれ関節鏡と器械を挿入して病変の処置を行います。それに対し、外科的に関節を切開する場合には、動物の大きさによって異なりますが、約 3~7 cm の切開を加えて関節を十分に開放して処置を行います。

当院では、外科的に行う前に、動物に対するストレスの少ない関節鏡下での処置を推奨しています。

関節鏡下での処置が困難な場合には、外科的な切開が必要となる場合もありますがその割合は低いです。行う処置としては、異常な関節構造の除去が主要な目的となります。

【CED の予後】

CED の予後に関しては、無処置の場合、症状の発現と消失を繰り返した後、症状が持続的に発現する場合が多いように思われます。

内科的治療を行った場合には、動物により個体差がありますが、薬物の投与により良化する場合も少なくないですが、長期間の投与により薬物に対する反応が以前よりも悪くなる場合のほうが多いように思われます。関節鏡下または外科的に異常な関節構造の処置を行った場合には、認められていた症状は早期に回復することが多いです。

しかし、CED の根本的な原因の除去に関しては、現在の獣医学では不可能ですので、CED により二次的に発症する関節炎の進行を完全に抑止することは不可能であることを認識する必要があります。もし一度処置を行った後に、症状が再発した場合には再度関節鏡下または外科的処置を推奨します。

〒136-0072 東京都江東区大島7-1-13

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全て予約診療 月~土  :9:00〜12:00(最終受付11:30)
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