THR

股関節全置換術(THR)は、犬の股関節形成不全の救済的治療法の一つであり、骨格形成終了後で、股関節形成不全に起因した異常な関節構造を人工関節にて再建する手術です。

THR の最大の利点として、大腿骨頭・骨頚切除術(FHO)とは異なり、人工関節にて関節構造の再建をはかるため、患者は術後早期より患肢の使用が可能であり、三次元方向の関節可動域と負荷伝導能を維持することが出来るため、関節の整合性・不安定性あるいは骨関節炎に伴う疼痛から解放することができます。

当院では、従来より実施してきた大型犬に対する BioMedtrix社 BFX THRシステム、および Kyon社 Zurich セメントレスTHRシステムのみならず、2011年より小型犬や猫に対する BioMedtrix社 Micro THRシステム、および Nano THRシステムが実施可能となりました。

現在、日本における大型犬の飼育頭数は減少しておりますが、チワワやトイプードルなどの小型犬は根強い人気を維持しております。

その中でも、特にトイ犬種に好発するレッグカルベペルテス病(大腿骨頭無菌的壊死症)は、保存療法に対する反応が乏しく、唯一の治療法としては診断後なるべく早期に大腿骨頭・骨頚切除術(FHO)を行うことが推奨されております。

当院においても、レッグカルベペルテス病や再発性の股関節脱臼に対しては、FHOによる外科的治療を第一選択としておりましたが、小型犬に対するTHRの導入により、レッグペルテス病の2.0kgクラスのトイ犬種に対しても人工関節による関節再建を行うことが可能となりました。 THRを行うことにより、麻酔覚醒直後には患肢を使用し始め(遅くとも数日以内)、疼痛から解放され、FHOを実施した症例に比較して、劇的な機能回復を得ることができます。

THR適応症例に対して、下記のような一連の評価を行ったうえで、手術手技の決定を行っております。

[ THRの適応症例の評価 ]
 * 適応年齢は骨格形成終了後である約9ヵ月齢以降であれば、全年齢に関して実施可能
 * 整形外科学的検査(オルトラニー試験、バーデンス試験)で股関節の弛緩を評価。
 * Penn HIPの評価。
 * 手術前関節鏡検査による股関節内評価。
 * 大腿骨頭および骨頸部の形態的評価(X-ray、CT)。特に、事前のCT検査により、股関節お
  よび大腿骨の三次元的な評価(前捻角、頚体角を評価)を行うことで綿密な術前評価を行う。
 * 全身に感染症、腫瘍性病変、股関節以外の関節の病変(特に前十字靱帯損傷)、後肢の神経障
  害(特に馬尾症候群)が存在しないかの鑑別評価。

[ THRの手術内容 ]
大型犬に対してのTHRは、従来、セメントを用いて人工関節を固定する方法を行っていましたが、現在は、セメントを使わず、人工関節の表面に大腿骨および寛骨臼の骨を形成させ固定する BioMedtrix社 BFX THRシステム、スクリューを使って人工関節を固定する Kyon社 Zurich セメントレスTHRシステムのどちらかの手術方法によって行っています。

小型犬や猫に対してのTHRは、BioMedtrix社 Micro THRシステムおよびNano THRシステムともに大腿骨と寛骨臼にセメントを用いて人工関節を固定する手術方法によって行っています。

どちらの手術方法においても、術前に綿密に評価した患者の骨格に合わせて、専用のテンプレートで人工関節のサイズを決定し、人工関節として寛骨臼にカップを設置し、大腿骨にステムを挿入し、大腿骨-寛骨臼間の距離に合わせてヘッドを設置します。

1.BioMedtrix社 BFX THRシステムを実際に適用した患者のX線写真と人工関節

 

ゴールデンレトリバー、2歳齢、去勢雄、股関節形成不全による後肢跛行のため、他院より紹介され、当院にて、THRを実施。現在、手術から2年経過しているが経過は良好である。

2.Kyon社 Zurich セメントレスTHRシステムを実際に適用した患者のX線写真と人工関節の骨模型

シェルティー、11ヵ月齢、雄、後肢跛行を主訴に他院より紹介されて当院来院。左後肢の大腿骨頭の成長板骨折のため、THRを実施。現在、手術から2年経過しているが経過は良好である。

3.Micro THRシステムを実際に適用した患者のX線写真とMicro THRおよびNano THRシステムの人工関節

 

トイプードル、9ヵ月齢、雄、2ヵ月前からの間欠的な右後肢跛行と前日からの突然の挙上を主訴に当院に紹介来院。右大腿骨頭のレッグペルテス病およびそれに伴う成長板骨折のため、Micro THRを実施。術後2日目より患肢を使用し始め、現在、ほぼ跛行なく歩行可能となっている。

実際に当院でTHRを実施した症例はこちらに紹介してあります(症例3)。

jaha 日本動物福祉協会

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